『トライアングルストラテジー』レビュー | あなたの正義は誰かを傷つける。重厚な戦記譚と極限の選択が胸を刺す、現代SRPGの最高峰

基本情報

1990年代に数々の名作が生まれたタクティクスRPGというジャンルに、現代の技術と全く新しい選択システムを引っ提げて殴り込みをかけた作品があります。 それが、スクウェア・エニックスが贈る『トライアングルストラテジー』です。 本作は、かつて『ファイナルファンタジータクティクス』や『タクティクスオウガ』といった重厚なシミュレーションRPG(SRPG)に熱狂した目の肥えたゲーマーはもちろん、物語主導の濃密なゲームを遊びたい大人のプレイヤーに向けて、真っ向から作られた骨太な一本となっています。

正式タイトルトライアングルストラテジー(TRIANGLE STRATEGY)
開発・販売元開発:アートディンク&スクウェア・エニックス 浅野チーム / 販売:スクウェア・エニックス
発売日Nintendo Switch:2022年3月4日 / Steam:2022年10月14日 / Meta Quest:2024年11月1日
対応プラットフォームNintendo Switch / Steam(Windows) / Meta Quest(2, 3, Pro)
ジャンルタクティクスRPG
CEROC(15才以上対象)
価格(税込)通常版:7,680円(税込)※Meta Quest版は3,990円(税込)
公式サイトhttps://www.jp.square-enix.com/trianglestrategy/
Steamストアhttps://store.steampowered.com/app/1850510/TRIANGLE_STRATEGY/

本作は、美麗なドット絵と3D画面を融合させた「HD-2D」シリーズの系譜を継ぐ完全新作のタクティクスRPGです。 開発は『ブレイブリー』シリーズや『オクトパストラベラー』で知られるスクウェア・エニックスの浅野チームと、数々のシミュレーションゲームに定評のあるアートディンクがタッグを組んで手掛けました。 本作の発売に至る経緯で特徴的だったのが、発売約1年前の段階で「先行体験版」を配信し、全世界のプレイヤーから膨大なアンケートを回収した点です。 そこで得られた「カメラの操作性を改善してほしい」「ロード時間を短縮してほしい」「会話のテンポを上げてほしい」といったユーザーの声を開発陣が真摯に受け止め、製品版に向けて徹底的なブラッシュアップを行いました。

PC / Steam評価・配信状況

Steam版におけるユーザーレビューは、2026年7月時点で「非常に好評」を獲得しています。 レビュー総数は数千件を超えており、世界中のコアゲーマーから高く支持されていることが窺えます。 特に海外の評価では、緻密に翻訳された政治劇のクオリティや、ご都合主義ではないリアルなシナリオ展開、そして理不尽さを排した絶妙なバトルバランスが高く評価されています。 JRPGの伝統を受け継ぎながらも、海外のストラテジーファンをも唸らせる完成度を誇っているのが特徴です。

物語と世界観:塩と鉄の利権が招く大人の群像劇

本作の舞台となるのは、三つの国が割拠する「ノゼリア大陸」です。 この世界では、生命に不可欠な「塩」の利権を一手に握る『聖ハイサンド大教国』、雪と氷に閉ざされ豊かな「鉄」の算出を誇る『エスフロスト公国』、そして両国の狭間に位置し、豊かな緑と大河に囲まれた商業の国『グリンブルク王国』が、長年にわたり血で血を洗う戦い「塩鉄大戦」を繰り広げてきました。 現在は一応の平穏が保たれ、三国の共同採掘事業による融和が進んでいるように見えましたが、ある事件をきっかけにその脆い均衡は一瞬で崩壊し、大陸全土を巻き込む新たな大戦の火蓋が切って落とされます。 この「塩」と「鉄」という、極めて現実的かつ生々しい資源の奪い合いから物語が始まる点が、本作の世界観をこの上なく強固なものにしています。

主人公のセレノア・ウォルホートは、グリンブルク王国の筆頭貴族であるウォルホート家の次期当主です。 彼はエスフロスト公国の公女であるフレデリカとの政略結婚を控え、激動する時代の渦中へと否応なしに巻き込まれていきます。 セレノアの目的は、単に敵を倒すことではありません。 民を守り、家臣を守り、そして婚約者や親友の想いに応えながら、一族を生き残らせるために過酷な選択を重ねていくことが彼の戦いとなります。

ストーリーのトーンは非常にシリアスで、勧善懲悪のヒーローショーとは無縁の「大人のための群像劇」です。 誰もが自分の信じる正義、あるいは守るべき国家の国益のために動いており、単純な悪人はほとんど登場しません。 友情や血縁よりも政治的な裏切りや国家の損得が優先されるシーンも多く、物語は常に張り詰めた緊張感とともに進んでいきます。 時には何かを守るために、別の何かを完全に切り捨てるような決断を求められ、プレイヤーは何度も胸を締め付けられることになります。

メインストーリーの裏側では、世界各地の状況や、仲間に加わったサブキャラクターたちの素性を掘り下げる「挿話(サブクエスト)」が用意されています。 これにより、戦場に立つ兵士一人ひとりがどのような覚悟でセレノアの陣営に身を投じたのかが描かれ、世界観の解像度が一層高められています。 綺麗事だけでは生き残れない乱世の厳しさと、その中で輝く人間の信念の気高さを描ききった本作は、戦記ファンにとっては記憶に残る「ゲーム体験」を提供してくれます。

ゲームシステムの特徴とプレイフィール:高低差と連携が生む極上のタクティクス

バトルの基本は、クォータービュー(斜め見下ろし視点)のマス目状マップで展開する、伝統的なターン制シミュレーションバトルです。 プレイヤーはいつでもカメラを自由に回転させ、ズームイン・アウトを行って戦況を把握することができます。 戦闘中のUIは整理されており、敵の攻撃範囲や行動順(タイムライン)が視覚的にわかりやすく表示されるため、次の手番で誰が動き、どのマスが危険なのかを常に計算しながら進めることができます。

本作には汎用ユニットという概念が存在せず、すべてのキャラクターが固有の名前と外見、独自の「クラス(職業)」を持っています。 弓による遠距離攻撃と罠の設置が得意なキャラ、隠密行動で敵の背後を取り追加行動ができるキャラ、地形を変化させる魔法を操るキャラなど、一人ひとりの性能が明確に差別化されています。 武器やスキルの強化ルート、クラスチェンジの方向性はキャラクターごとにほぼ固定されており、プレイヤーが自由に変えることはできませんが、その分「使えない死にキャラ」が存在しない絶妙なバランスが実現されています。

ゲームは「シナリオパート(会話)」「探索パート(街の調査や情報収集)」「バトルパート」を繰り返すことで進行します。 バトルの前後には「詰所」と呼ばれる拠点にいつでもアクセスでき、ここで武器の強化や素材を消費してのアビリティ解放、戦力の底上げを行う「想定演習」を行うことができます。 実際にプレイしていて特に震えたのは、「地形と属性のシナジー」が完璧に決まった瞬間の圧倒的な爽快感でした。

例えば、敵の魔術師が守る城門に対して、まず味方の魔術師が氷を降らせて地面を凍らせ、別のキャラが炎を放つと氷が溶けて「水溜まり」に変化します。 そこに雷魔法を撃ち込むと、水溜まりの上にいる敵全員に電撃が伝導し、一網打尽に麻痺させることができます。 プレイヤーの閃きがそのまま戦術の最適解としてハマった時の快感は、他のゲームでは味わえない中毒性があります。

また、本作の代名詞とも言える「信念の天秤」システムは、プレイ中何度も本気で頭を抱えさせられる要素です。 重大な決断を下す際、主人公一人の独断ではなく、仲間たちによる投票でルートが決まるのですが、事前の探索パートで情報を集め、仲間の価値観に寄り添った選択肢を選ばなければ、彼らの心は動きません。 自分はAルートに進みたいのに、誰も説得できずBルートへ進むしかない状況に直面した時、リーダーとしての無力さと、それでも運命を受け入れて戦う没入感が強く胸に刻まれました。

hiromin
天秤の選択は毎回結構いい感じに悩ませてくれたよ。2周目以降は簡単に自分の行きたい方向に仲間を誘導できるよ。

ゲームの難易度

本作の難易度は、同ジャンルの中でも「やや高め(骨太)」に調整されています。 特にノーマル以上では力押しでのクリアはほぼ不可能で、敵のAIが非常に賢く、こちらの防御が薄いキャラクターや背後(バックアタックでクリティカル確定)を執拗に狙ってきます。 高低差の概念も極めて重要で、高所に陣取った敵弓兵からの攻撃は威力が跳ね上がるため、前衛で戦線を維持しつつ機動力のあるユニットで高所を制圧するなど、戦術的な思考が常に求められます。

ただし、ゲームオーバーになってもそれまでに獲得した経験値を引き継いだままバトルを最初からやり直せる仕様になっているため、リトライが無駄になりません。 「難しくて歯応えはあるが、理不尽ではない」という、ゲーマーが最も燃える絶妙な難易度設計になっています。

hiromin
単騎で突っ込むとあっという間に囲まれてやられる感じの難易度。もし1回目で負けてもレベルは上がったままなので、ノーマルならほとんどのステージが2、3回チャレンジすればクリアできるよ。

良かった点・気になった点

👍 良かった点
  • 「HD-2D」による美しいグラフィック:
    2Dの温かみのあるドット絵と、3D画面による美しい光と影の演出、エフェクトが見事に融合しています。水面の反射や風に揺れる木々など、どこを切り取っても絵画のような美しさを誇ります。
  • 自分の選択が運命を変える「信念の天秤」:
    多数決によってルートが決まるシステムが秀逸で、仲間を説得するために街で情報を集め、彼らの思想に訴えかけるプロセスが物語への圧倒的な当事者意識を生み出しています。
  • 利権と陰謀が渦巻く、リアルな大人の政治劇:
    神国、公国、王国の三つの国家が、それぞれの正義と「国益」のために戦うシナリオが実に見事です。綺麗事だけでは進まない、ビターで濃厚な戦記物を堪能できます。
  • 高低差と位置取りが勝敗を分ける奥深いバトル:
    マップの段差を利用した攻撃や、敵を挟み撃ちにした際に発動する「追撃」など、盤面のコマの動かし方一つで戦況がガラリと変わる緊密な戦闘が楽しめます。
⚠️ 気になった点
  • 前半の会話イベントが長く、テンポが重め:
    世界観や三国間の関係性を丁寧に描写するため、序盤〜中盤にかけて戦闘のない長い会話パートが続きます。早くガッツリ戦いたい人には少々退屈に感じられるかもしれません。
  • 入り組んだマップでのカメラ操作の癖:
    高低差が激しく建物が密集しているマップでは、カメラ視点を変えてもキャラクターの位置が見づらかったり、マス選択に手間取ることがあり、若干のストレスを感じます。
  • 育成のカスタマイズ自由度が低い:
    キャラクターのクラスや習得アビリティのルートがほぼ一本道のため、「自分好みのスキルを組み合わせて最強の兵士を作る」といった自由度はほぼありません。
  • 真のエンディングへの到達条件がシビアすぎる:
    物語のすべてが救われる特定の「真ルート」へ行く条件が複雑かつ隠されており、事前情報なしの初見プレイだけで到達するのはほぼ不可能です。
hiromin
各会話の一回あたりの時間は結構短めに調整されてるよ。多分先行体験版で会話のテンポについては意見が多かったんじゃないかな。

価格とボリューム

本作の定価は7,680円(税込)となっており、フルプライス帯のタイトルです。 大手の主要ストア(My Nintendo StoreやSteamストア)では定期的にセールが行われており、タイミングが良ければお得に購入することも可能です。

プレイボリュームに関しては、1周クリアまでおおよそ30時間。 さらに、選択肢によって中盤のマップやストーリー、加入する仲間が全く異なる複数ルートが存在するため、すべてのルートを網羅し、やり込み要素まで遊ぶとなれば、100時間を超える圧倒的なボリュームを誇ります。 カスタマイズ自由度の低ささえ納得できれば、密度の高いシナリオと一戦一戦にじっくり挑むバトル、周回プレイの楽しさを考慮すると、価格に対する満足度は非常に高いと言えます。

hiromin
私は1周目クリアまで27時間、2周目までは50時間ほどでした。

こんな人におすすめ

  • かつて『タクティクスオウガ』や『FFT』などの名作SRPGに熱狂した人
  • キャラクターの強さだけでなく、プレイヤー自身の「戦術・パズル的思考」で難局を突破したい中級者以上のゲーマー
  • 正義と正義がぶつかり合う、勧善懲悪ではない重厚な歴史・戦記ファンタジーが好きな人
  • 自分の選択によって物語の結末や仲間の運命がガラリと変わる、マルチエンディング作品を楽しみたい人
hiromin
周回プレイが嫌いな飽きっぽい私が、一気に2周目の真エンディング到達までプレイできました!一回負けてもレベルが上がるから大抵次は勝てるし、天秤の選択肢は毎回いい感じに悩ませてくれるし、最後まで楽しかった!!
総合評価
87 / 100

『トライアングルストラテジー』は、往年の名作へのリスペクトを捧げつつも、現代のグラフィック技術と「信念の天秤」という独自のシステムによって、見事に一本の独立した傑作として昇華されたタクティクスRPGです。 育成の自由度が低いことや、バトル1戦にかかる時間が長く、特に中盤以降のフリーバトル(想定演習)が同じマップの繰り返しで作業感を伴う点など、システム面で惜しいポイントはいくつか存在します。 また、選んだルートによっては非常に胸が苦しくなる救いのない展開(鬱展開)もあり、万人が手放しでハッピーになれる作品ではありません。 しかし、その重みこそが本作の最大の魅力です。 敵を挟み撃ちにしたときの爽快な連携、環境を利用した魔法のコンボ、そして何より、自分の下した決断が世界を変えていくという緊張感は、他のゲームでは決して味わえない贅沢な時間でした。 シミュレーションRPGというジャンルが好きなゲーマーなら、間違いなく遊んで損はない名作の一本です。

投稿者プロフィール

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hiromin
RPG、アクションからノベルゲームまで、気になるものは何でも手を出す雑食ゲーマー。エルデンリング、仁王など死にゲー大好きです。でも得意ではないのです。いつかは華麗なプレイができるようになりたいなぁ。

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